2020年7月2日、フジ住宅ヘイトハラスメント裁判の堺地方裁判決が出ました

すでに当ブログでも何度もお伝えしてきたように、この裁判は、フジ住宅創業者会長である今井光郎さんが「社員教育」としてヘイト文書を社員たちに配布していたことに対して争われていたもの

また、ヘイト文書に対して感想文を書かせていたことも争点のひとつでした(無論、創業者会長に反論するような感想など一従業員に書けるはずもなく……)

だけでなく、育鵬社の教科書採択を有利にするため、教科書展示会に社員を動員した点も問題視されていました

訴えたのは、朝鮮にルーツをもつパート従業員の女性です

この裁判はようするに、

「外国人へのヘイトが溢れる職場で、外国にルーツをもつ人が安心して働けますか?」
「極めて個人的な思想信条を、創業者会長に合わせなければならない職場で働けますか?」
「なぜ思想信条に反してまで、極右教科書として名高い育鵬社を、創業者会長の命令で推さなければならないの?」

という至極まっとうな訴えからはじまったものなのです

さすがに負けるわけはないと思っていたのですが、やはり勝訴という形で地方裁では決着がつきましたね(フジ住宅は控訴を表明)

各種報道や支援団体弁護団の声明にもあるように、ほぼほぼ完全勝訴です

報道ではあまり紹介されていませんが、弁護団声明で以下のようにあるように、教科書問題としての側面かりも良い判決がでたようでなによりです

"3 また、フジ住宅及び今井会長は、地方自治体における中学校の教科書採択にあたって、全従業員に対し、特定の教科書が採択されるようアンケートの提出等の運動に従事するよう動員した。
この点について、判決は、業務と関連しない政治活動であって、労働者である原告の政治的な思想・信条の自由を侵害する差別的取扱いを伴うもので、その侵害の態様、程度が社会的に許容できる限度を超えるものといわざるを得ず、原告の人格的利益を侵害して違法であると述べ、フジ住宅及び今井会長の行為の違法性を認めた"

まあ、教科書問題に限らず全体的に「良かったぁ」というのが感想ですね。少額ですがカンパとかもしていたので、素直に嬉しいです

今回の判決では、①ヘイトのなかに身を置かなくてもいい権利、②思想信条の自由まで社風に合わせなくていい権利、③上司の変な活動に付き合わされなくていい権利……が守られたわけです

ヘイトに晒されないマジョリティにとっても、②や③の観点から善き判決だったのではないでしょうか。僕らは皆、原告に対して「ありがとうございます」と言うべきでしょう

そしてなにより、原告の痛みに寄り添う判決だった……この点がなにより良かったと思います

判決文を書いた中垣内健治裁判長には、惜しみない拍手をおくりましょう


フジ住宅及びフジ住宅応援団の反応


この判決を受け、フジ住宅やその応援団はどう反応したのか?

僕の力不足と時間不足からいちいち反論はしませんので、とりあえずご紹介だけ……

※以下、ガチなヘイト文章が含まれるので閲覧注意です※


「ナニワの激オコおばちゃん」の反応

「ナニワの激オコおばちゃん」なる人物はフジ住宅の応援団の一員です。フジ住宅が公式サイト内に設置した「訴訟・裁判に関する当社の主張」のコメント欄に、たびたびこの人のブログが登場するので、この問題に詳しい方にはお馴染みかと思います(なお、コメントはフジ住宅の承諾がないと反映されない仕組みです)

では、「ナニワの激オコおばちゃん」がどういう反応をしたのか、見ていきましょう

"おとなしい日本人を狙い撃ちにして、あちら側の人たちは攻撃してくるわけですね。ホンマにもう、ええかげんにしてほしいですね"

"人種差別、民族差別も何もない、ええ会社やんか。こんなええ会社を訴えて、どないするんや?そんなことするから結局は、他の人たちからコワがられ、避けられるんやで、あんたらは。「訴えるぞ!」、「3300万円!」とか言うたら、ビビッて和解して来るやろう、とタカをくくってたんとちゃうか"

"もう日本人はみんな、気い付いてしもたんや。これまでそういうやり方で、日本の中で真面目に生きてる人たちがどんだけ煮え湯を飲まされてきたか、を"

「フジ住宅はヘイトなんてしていない!」と訴える文章でこれだけヘイトを撒き散らすのですから、たいしたものですね

ちなみに「ナニワの激オコおばちゃん」さんは、フジ住宅創業者会長である今井光郎さんのやっている一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会から活動の助成金を受け取っています

つまりはフジ住宅の利害関係者ということですね




南木隆治の反応

南木隆治さんは「『フジ住宅』を不当に訴える反日裁判と、反日思想を排す。『フジ住宅』は「ヘイト企業」ではない。南木隆治」なるブログの運営者です。言うなればフジ住宅応援団の応援団長といったところでしょうか

彼は長年関西で草の根ウヨ活動をしていまして、NPO法人で講師をつとめるくらいには、地元では有名ですね(そのレジュメにはなぜか「アカシックレコード」なる文字列があったりしますが)

この方も「ナニワの激オコおばちゃん」と同様、フジ住宅今井会長の利害関係者です

実は、南木隆治さんは前述した一般社団法人今井光郎文化道徳歴史教育研究会で役員をつとめています。しかもその助成先は、彼のお友達団体がチラホラ……



さて、今回の判決ですが、南木隆治さんも参加したようですね

"7月2日、以下の会社の告知の通り、傍聴券の抽選はありません。
今回、双方8名の席が割り当てられました。
南木はもちろん入れていただきましたので、極力早く皆様に判決結果を報道させていただきます"

たしか「善意の第三者がフジ住宅を応援している」という設定だったはずなのですが、もはやその設定は有名無実なもののようですね

では、南木隆治さんの判決の反応を見ていきましょう

"(速報)『フジ住宅裁判判決主文』「1 被告らは原告に対して110万円支払え。2 原告のその余の訴えを棄却する。」『ヘイト行為』など一切認められていない。"

"判決には、会社が「ヘイト行為」をしたなどという事を認める記述は一切無く、原告側の請求は全て棄却されています
民事訴訟で法的拘束力を持つのは実質は「主文」だけです
後の説明はだらだらと裁判官は何でも書けるのです"

おおーっと!

南木隆治さん、どうやら現実を受け止めきれず「フジ住宅が負けたという報道はフェイクニュース!ヘイトハラスメントについては主文に書いてないから認められるわけがない!!」との幻想にしがみついた模様です

たしかに原告は3300万円の請求をして、裁判所が認めたのは110万円でした("原告のその余の訴えを棄却する"との主文はここから来ています)

だからフジ住宅に課せられた法的拘束力は、110万円を払うことのみというのも、またたしかなこと

だからといって"後の説明はだらだらと裁判官は何でも書ける"わけでないことは、常識的に考えればわかること

主文のなかでヘイト行為や教科書展示会のことを書いていなければ、それを無視して話を進めていいわけでないことは当たり前の話でしょう


フジ住宅の反応

"フジ住宅は判決後、「私企業における社員教育の裁量や経営者の言論の自由の観点から、到底承服し難い」などとしたコメントを発表した"

と、いうわけでフジ住宅さんは控訴にうって出たわけですが……

とりあえずは、前述した「訴訟・裁判に関する当社の主張」を見てみましょう

訴訟・裁判に関する当社の主張

判決に反応しているのは、2020年7月4日の記事ですね

"既に大手新聞各社、NHKを始め、テレビニュースでも判決内容について報道が為されていますが、その多くが、判決の公正な説明と言うよりは、まったく原告側の完全勝訴であるかのように読者を誘導する、「偏向報道」に満ちていると弊社では判断しています"

"裁判所は弊社を「ヘイトハラスメント」をしているなどと認めたわけではありません"

"もしも、当裁判が一般の「損害賠償請求」を目的とする民事裁判だとすれば、判決主文1に示されたように、原告の請求金額3300万円に対して、その30分の1である、110万円の支払いを命じ、裁判費用についても、原告側が30分の29、当方に請求されるのは30分の1でしかないということは、当方の実質勝訴と言っても良いような判決であると言うこともできます"

これが「精神的勝利」というやつでしょうか。ここでも主文を持ち出し、裁判では実質的には負けていないと主張しています

……実質的に勝利してるんだったら控訴しなけりゃいいのに

"当裁判は、裁判を利用して原告と、原告を支援する人々が起こした日本人への「言論封殺」を目指す政治活動の面があると、弊社は判断せざるを得ません"

"もしも、最終的にこの裁判で弊社が敗訴すれば、必ず我が国の言論、出版、思想信条の自由に大きな制約、弾圧が、加えられる事になるでしょう"

"我が国はそうして滅びて行く事になるでしょう"

誇大妄想がヒドイですね。まさしくネトウヨの妄想じゃないですか

これが上場企業のブログだと思うと、ちょっと本気でこの国の将来に絶望してしまいそうになりますね


おわりに


何度も言うようですが、良い判決がでてよかったです

とはいえ、フジ住宅やその応援団長は主文のみ切り取ってヤイノヤイノ言っているのが鬱陶しいので、はやいとこ判決の全文が読みたいものですねぇ