事件の主役である「神社界のツートップ」……田中恆清総長と打田文博神道政治連盟会長が「日本会議」なこともあり、以前から当ブログでは神社本庁職員宿舎不正転売疑惑に関連する記事をいくつか書いてきました

この事件は、

神社本庁の職員宿舎を異常に安く「ツートップ」のお友だちに売るお友だちはすぐさま別の業者に転売「ツートップ」とお友だちはニッコリ

……というものです


2018年の今頃、この疑惑に絡み、神社本庁の田中恆清さんの去就がワイドショーで注目を浴びていました

しかし今年2019年はうって変わって、主要メディアでこの問題を取り上げることは皆無となっています


やはり天皇が代替わりし元号が変わったことの「リセット感」が、マスメディアをして問題追及の手を緩めさせているのかもしれません

もしくは田中恆清さんが「天皇陛下御即位三十年奉祝委員会」及びそこから横滑りした「天皇陛下御即位奉祝委員会」の役員ということが関係あるのかもしれませんね

ちなみに天皇陛下御即位奉祝委員会は、「嵐」の奉祝曲や「万歳三唱15回」で有名な「国民祭典」を取り仕切った民間団体(ほぼほぼ日本会議)です

話の本筋とは関係ありませんが、まだ日本会議という名称が広く知られる前の奉祝委員会……「天皇陛下御即位二十年奉祝委員会」の役員名簿を見れば、奉祝委員会=日本会議という構図がよりわかりやすいかと思います(2019年の奉祝委員会は「日本会議隠し」をしているわけですね)

皇室にも関わることゆえ忖度があったのか、あるいは本当にニュースバリューがないと判断したのかはわかりませんが、ともかく神社本庁の疑惑に関する報道が主要メディアで報じられなくなったのは確かです

このため田中恆清さんが異例の総長職4選を果たしたことも、その総長職選挙でのド汚い策謀も、打田文博さんが神道政治連盟会長職に再選したことも、知らない人の方が多いかもしれません



さて、このたび神社本庁職員宿舎不正転売疑惑に新たな動きが見られたのですが……

これもたぶん主要メディアはスルーしているのでしょうね


「檄」と裁判と「神社本庁の自浄を願う会」


不正転売疑惑が一般の神職たちにも知られるようになったのは、2016年5月23日、当時の東京都神社庁長・松山文彦さんが神社本庁役員会で行った執行部批判からです

"「職舎の簿価は約七億六〇〇〇万円だと思うが、不透明な売買によって基本財産を五億円以上損ねてしまったことを反省すべきだ。損失額を神職の理事で割った場合、一人当たり四〇〇〇万円にもなる」"
藤生明『徹底検証 神社本庁』より

その後、2016年から翌年にかけ、神社関係者に十数通の怪文書が届けられることとなり、この話題は神職の間で爆発的に広まりました

そんな折、真相究明を訴える告発文「檄」が神社本庁理事2名に手渡されます

告発者の名前は稲貴夫さん。神社本庁で総合研究部長だった人です。"だった"と過去形にしたのは、神社本庁が「檄」を問題視し、稲貴夫さんを懲戒免職にしたからです。稲貴夫さんは信頼できる理事2名に「檄」を渡したにも関わらず、どういうわけかその存在を「神社界のツートップ」に知られてしまったのです

※「檄」は↓で読めます

また、不正転売が疑われる職員宿舎売却時に財政部長を担当していた瀬尾芳也教化広報部長も、真相究明に動いていたため一般職員に格下げされてしまいます

稲貴夫・瀬尾芳也の両名は不当人事に抗うため、2017年10月17日に神社本庁を訴えます。この裁判の立派なところは、地位の回復を訴えたばかりでなく、神社本庁の罪を暴き、自浄を目的としているところです

稲貴夫・瀬尾芳也の裁判を支えるため、「神社本庁の自浄を願う会」が結成されます。会長は髙池勝彦さんです。髙池勝彦さんは「新しい歴史教科書をつくる会」代表の有名ウヨですね

そうなのです、実はこの労働裁判はウヨとウヨの争いだったのです(稲貴夫さんも『教育再生』で連載をもっていたので、まずウヨでしょう)

田中恆清さんはこの裁判を「左翼の改憲潰しだ!」と罵っていましたが、なんてことはない、ただの内ゲバなんですね

……いや、内ゲバというのはさすがに失礼ですか。労働問題に右も左もありませんし。ただ「悪い組織」と「被害者の労働者」があるのみです


稲貴夫への刑事告訴ーー歪められた警察行政


一方、「神社界のツートップ」も負けてはいません。告発文「檄」がツートップを名指ししているのが名誉毀損にあたるとし、稲貴夫さんを刑事告訴しました

……まあ、今回の記事のタイトルどおり、見事に不起訴処分となってるんですけどね

「神社本庁の自浄を願う会」のホームページに、稲貴夫さんが記した刑事告訴の顛末が掲載されていますので、少し見ていきましょう

"神社本庁は(不当処分を争う裁判の)準備書面の中で私を「名誉毀損で刑事告訴され、警察による捜査が進んでいる」ような卑劣な人物であると度々表現してきました"

上の文章から、ツートップにとって刑事告訴は、裁判を戦ううえでのキーアイテムだったことがわかりますね

論争相手の信用を落とす「事実」を作り出し戦いを有利に進める古典的な手口ですが、かなり注目度の高い裁判でそんな真似をするとは、ツートップ恐るべしです

前川喜平さんが「怪文書のようなもの」事件の矢面に立つや、出会い系バー通い(実態は貧困調査)をリークしたどこかの政権を彷彿とさせますね


ツートップ側が刑事告訴について言及しはじめた当初……というか、かなり時間がたつまで、稲貴夫さんはその意味がわからなかったといいます。なぜなら2019年の6月になるまで、警察が接触してくることがなかったからです

稲貴夫さんは、2019年6月~7月にかけて、都合三度、任意で原宿署の事情聴取に応じました。どうやらツートップは、告発文「檄」だけでなく、怪文書をバラまいた人物として稲貴夫さんを刑事告訴したようです

事情聴取で稲貴夫さんは、担当の刑事から驚愕の事実を聞くことになります


"私の告発文が公安三課の警察官を通じて神社本庁に漏洩したことについては、「何じゃこら」と驚いていました。また、通常このような案件を警察が受理することはないとして、刑事自身が受理には政治的な背景があったのではと考えているようでした"

まず、信頼できる理事2名に手渡したはずの告発文「檄」が公安を通じてツートップに漏洩していた事実に驚きを禁じえませんね。僕ははじめて知りました(覚えてないだけかも?)。稲貴夫さんはサラリと書いているので、もしかしてガイシュツ(←なぜか変換できない)の情報だったのでしょうか

次に、"通常このような案件を警察が受理することはない""政治的な背景があったのでは"という言葉についてです

先日地裁で勝訴した伊藤詩織さんの件と同じく、政治によって警察行政が歪められた例ですね

注目すべきポイントは、警察が稲貴夫さんに接触を始めたのが2019年6月から、という点です。田中恆清神社本庁総長が5月、打田文博神道政治連盟会長が6月にそれぞれの役職に再選されました。権力基盤を再確保した2人の意向で政治が動き、政治が警察に命令を下した……ということではないでしょうか?(一応、刑事告訴の受理そのものはそれ以前からなされていたようですが、動き出すタイミングがあまりにも……)
逆に言えば、ツートップの再任まで政治・警察は動かなかったのではないか。それほどまでに2人の権勢は、職員宿舎不正転売疑惑によって揺らいでいたのではないか。ツートップを狩るまで、あと一歩のところだったのではないか
……なんてことを考えると、盛り上げるだけ盛り上げておいてあとは知らんぷりな主要メディアには歯がゆい思いがしますね


不起訴処分!


警察の調査が終わると、順当に行けば次は検察の出番です

稲貴夫さんは検察からの連絡を待ちました。が、待てど暮らせど連絡がない。そうこうするうちに11月末、担当の刑事が証拠品の返却を申し出てきたことにより、稲貴夫さんは不起訴処分を知るのでした

稲貴夫さんは検察に不起訴処分告示書を要求。それによれば、9月30日に不起訴処分が決定されていたようです

不起訴処分の理由は「嫌疑不十分」でした

至極真っ当……というか、そりゃそうだろうな、という脱力感のある結末ですね。告発文「檄」が名誉毀損にあたるかは議論の分かれるところでしょうが、怪文書について稲貴夫さんが関わっていたかどうかなんて、つかみようがないでしょう

というか、そもそも政治の力で警察行政を歪めなければ、受理さえされていないていどの事件なのです(嫌疑が十分なら、つまらない事件でもさすがに受理するでしょう)

稲貴夫さんは不起訴処分の報告を次のような言葉で終えています

"以上が不可解な刑事告訴事件の顛末ですが、ともかく民事裁判における被告神社本庁側の主張の一角が崩れたものと思います"

"被告神社本庁側の主張"というのは、先にも述べたように稲貴夫さんを"「名誉毀損で刑事告訴され、警察による捜査が進んでいる」ような卑劣な人物である"とする印象操作のことです

この印象操作が崩れたと稲貴夫さんは無邪気に笑っているのですね

しかし、果たして本当にそうでしょうか?

神社本庁には顧問弁護士がいます。政治の力を使わなければ受理さえしてもらえないような刑事告訴なんかで、本当に稲貴夫さんを名誉毀損に問えると思っていたのでしょうか?

僕はそうではなかったのだと考えます

ツートップ及び神社本庁顧問弁護士が欲しかったのは「名誉毀損が警察に受理された」という事実までであり、「稲貴夫さんが名誉毀損で罰を受ける」という事実は必要なかった

なぜなら、物事の実態を表さない「限定された事実」だけで印象操作には十分すぎるからです

前川喜平さんに対する印象操作を思い出してください。そしていまだに前川喜平さんを「出会い系バー」と結びつけて考えるネトウヨやウヨ芸人どもを思い起こしてください。「限定された事実」による印象操作が有効だとわかるでしょう

おそらくツートップ側は、不起訴処分もなんのその、変わることのない印象操作で稲貴夫さんを攻めたてるはずです

無論、裁判官がそんな稚拙な印象操作にのっかるとは僕も考えていません。ただし、ウヨどもは別です。ウヨどもはこのての印象操作には必ずのっかりますーーそれはウヨどもが馬鹿だからではなく、のっかった方がウヨにとって得だからという党派性のためです

ようするに稲貴夫さんを卑劣漢だと言い張るのは、裁判のためというよりも、裁判で負けたときの保険なのだ……というのが僕の結論です

たとえ裁判で負けたとしても、稲貴夫さんを卑劣漢に仕立て上げさえすれば、「卑劣な奴が起こした卑劣な裁判で負けた」と言い訳ができるからです。言い訳が出来る以上、ツートップの権力基盤は揺らぎはしても崩れはしない……稲貴夫さんを刑事告訴したのは、それが狙いだったのではないでしょうか?


おわりに


神社本庁の顧問弁護士は数年前から内田智さんがつとめています

彼はかつて「新しい歴史教科書をつくる会」を分裂させた日本会議「4人組」の一人です

今回の刑事告訴の件、彼の策略だったのでは……なんて妄想が逞しくなってしかたありません


それはともかくとして、神社本庁職員宿舎不正転売疑惑にからむ不当人事を訴えた裁判もいよいよ大詰め

2020年2月20日・3月9日に証人喚問が行われ、判決となります

「神社本庁の自浄を願う会」のホームページに、神社本庁側の証人が掲載されているので、引用させてもらいましょう

"・木田財政部長(当時)(現 生田神社権宮司)
・小野総務部長(当時)(現 宇佐神宮宮司)
・眞田総務部長(当時)(現 明治神宮禰宜)
・原田秘書部長(当時)(現 広島県神社庁参事)
・牛尾総務課長(当時)(現 教化広報部長)
・小間澤渉外部長・神政連事務局長(さらに現在は異例の秘書部長兼任)"

職員宿舎不正転売疑惑で名前のあがった人たちが散見されますが……なんと田中恆清さんや打田文博さんの名前がありません

まるで子分を法廷に出して自分は高みの見物を決め込む組長のようです

これではたとえ稲貴夫さんらが勝訴できたとしても、裁判での真相究明は期待できないでしょう。そして真相究明がなされなければ、神社界からツートップを追い出すことも……

裁判から先の展開は、マスメディアの力に期待するしかなさそうです