戦争協力への反省から、ウヨたちに「反日左翼」と呼ばれてしまう活動の多い日本のキリスト者ですが、なかには極めて右寄りの人間がいることは以前にもお話しました


そこで出てきた団体に「日本を愛するキリスト者の会」というものがありましたが、本日はその事務局長・久保有政さんを紹介したいと思います

日本を愛するキリスト者の会メンバー一覧


久保有政の挨拶


久保有政さんは創設メンバーとして「日本を愛するキリスト者の会」に「自虐史観を乗り越えることの大切さ」と題されたコメントを寄せています。まずはそちらを見ていきましょう

"自虐史観は、決して真実の歴史観ではありません。それはもともと、戦後アメリカ占領軍(GHQ)と、東京裁判によって広められた歴史観です。またその歴史観を広めるのに、日本を悪者としたかった左翼=共産党や、社会党が加わりました。またこれに日教組(左翼系の教師)や、朝日新聞(左翼系が多い)、NHKまでもが追随してきました"

もはや論ずるに値しないくらいテンプレなネトウヨ妄想史観ですね。妄想じゃないというなら、同様の主張をする論文(査読を通ったもの)を持ってきてください

それはさておき、もう少し先の文章に、久保有政さんがテンプレを離れ、オリジナリティを発揮している部分があります

"今こそ日本の近現代史を公平にみつめ、自虐史観を乗り越え、日本人のセルフイメージを健全化する必要があります。キリストの福音を通して、日本人のセルフイメージを健全化するのです。それが日本の真の復興につながります"

「日本人の復興のため、加害の歴史を修正しよう!」という、なにをもって復興としているのかよくわからない主張はウヨに珍しくありませんが、"キリストの福音を通して"それを為そうというのは初めて見た気がします

極め付きが次の一文

"私たちの宣べ伝えるべきは、「日本人は悪い民族だ」ではありません。「日本は神に愛された民族です! 神様を中心に歩んでいきましょう」です"

こ わ い(人類の総意)


久保有政とは何者か① オカルト


宗教の悪い面を詰め込んだような挨拶をした久保有政さんとは、いったいどういう人なのでしょうか?

久保有政さんが代表をつとめる「レムナント出版」からプロフィールを見ていきましょう

プロフィールによると、久保有政さんは「(単立)池袋キリスト教会牧師」と書かれています。(単立)というのは、どこかの教派に包括されているわけではない、ということ。たぶん◯◯池袋キリスト教会という名前の教会がたくさんあるのだと推察されます

それはまあいいとして、問題はその他の肩書きです

その他の肩書きは"聖書解説者、古代史家、現代史家、ノンフィクション・ライター、サイエンス・ライター、ユダヤ文化研究家"となっています

このとっちらかった肩書きだけでわかる人にはわかると思うのですが、久保有政さんはオカルト・陰謀論業界の物書きでもあるのです

オカルト系のいろんな物事に首を突っ込んで物書きをしていると、必然的に「サイエンスライター」「歴史ライター」などの肩書きがくっついてくるものなのです

実際、久保有政さんは現在もオカルト動画サイト「夢源樹」において、月額1980円(2019年10月から980円)にて動画を配信しています。「夢源樹」さんは超一流雑誌『月刊ムー』の動画も配信しています

では、久保有政さんはどういうタイプのオカルト野郎なのか?

プロフィールにあげられている主著や訳書のタイトルを見れば、久保有政さんが創造論者かつ日ユ同祖論者であることが見てとれます


創造論

創造論は反進化論とも言い換えることが可能でして、これは主にアメリカの宗教右翼が唱えているものですね

ようするに「人間が猿から進化したなんてことがあるか!そんなこと聖書に書いてないぞ!人間は神様が創造したんだよ!!」というアレのことです

詳しくは久保有政さん自身に語ってもらいましょう


"創造論は創造科学とかクリスチャン・サイエンスとも言います。それはどういうものかと言いますとね、宇宙とか地球の誕生、生物や人類の誕生、これは進化によってではなくて、聖書に記されたような特別な仕方で創造されたと考えたほうが多くの科学的証拠をよく説明できるという考えなんです"

世の中には進化論を取り込んだ創造論もあるそうですが、上記の動画を見る限り、久保有政さんは進化論を真っ向から否定していますね(進化論を取り込んでる創造論なら良いというわけではないですが……)

また、上記の動画には、以下のような発言もあり……

"(進化論の証拠は)ひとつもありません"

"(人類は250万年前に誕生して進化してきたと言われているが)実際に調べてみるとその数字がいかにいい加減なものかわかります"

"進化論を裏付ける証拠はたくさんあると思っているのはですね、長くそう教え込まれた思い込みにすぎないということなんです"

……わざわざこんなブログを読みに来るような人ならすぐに気づけたでしょうが、創造論者(反進化論者)が言っていることと、「慰安婦」問題や南京大虐殺についてウヨさんが言っていることはまるで同じです

ウヨ「証拠は?証拠は?証拠は? お前らの言う犠牲者数なんて無茶苦茶操作されてんじゃん! GHQの洗脳によって日本人は悪人だと思い込まされてたんだ!!」

本邦の歴史修正主義が本質的にオカルトと同じであることは、いくら強調してもし足りないくらいですね


日ユ同祖論

日ユ同祖論とは、超一流オカルト雑誌・月刊ムーによる解説(http://gakkenmu.jp/archive/6526/)によると、"日本人の先祖は、イスラエルから渡来してきたユダヤ人(古代イスラエル人)だとする説"のことです

まあ、トンデモ説ですね

日ユ同祖論については過去に書いているので、詳しくはそちらから


久保有政さんの日ユ同祖論関係の仕事で要チェックなのは、ヒカルランドでの仕事でしょう

ASIOS編著『昭和・平成オカルト研究読本』によると"今もっとも勢いのあるオカルト出版社"がヒカルランドです。オカルトだけでなく、いわゆる「スピリチュアル系」のウヨの書籍も数多く出版していることでも有名ですね

『昭和・平成オカルト研究読本』には、ヒカルランドで刊行されている書籍のなかでも日ユ同祖論に注目し、その代表例として、

『もう隠しようがない日本人が知って検証していくべきこの国「深奥」の重大な歴史: ユダヤ人が唱えた“古代日本”ユダヤ人渡来説』

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『【超図解】日本固有文明の謎はユダヤで解ける なぜ天皇家の秘密の紋章はライオンとユニコーンなのか』

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……の2冊をあげています

どちらの書籍にも久保有政さんが関連していますね


久保有政とは何者か② レムナント出版


久保有政さんのオカルト思想は、レムナント出版においていかんなく発揮されます

先にも触れたように久保有政さんはレムナント出版の代表です

70年代のオカルトブームを引きずり、「ニューエイジ」と呼ばれる運動が日本でも巻き起こり、やがて90年代のオウム真理教事件へと向かうオカルト成熟期。レムナント出版は1986年に創設されました

レムナントとは「残りの者」という意味らしいです

レムナント出版が発行する『月刊レムナント』から、その解説をひいてみましょう

"「レムナント」(残りの者)とは、様々な試練をへてもなお、神に忠節を尽くし、神に従い通す人々を意味しています。「レムナント」誌は、教派にかたよらず、福音的キリスト教の信仰に基づき、聖書の福音を純粋に伝えようとするキリスト教誌の一つです"
(2013年12月号より)

レムナント出版では久保有政さんの書籍や講演をおさめた映像の販売をしています。カタログ(http://www2.biglobe.ne.jp/~remnant/katarogu.htm)を見ると、やはり創造論や日ユ同祖論に関するものが多いようです

なべやかん氏の父親・なべおさみ氏と久保有政さんの対談『古代ユダヤで読み解く天皇家と嘘部の民の謎』は、説明文を読む限りなかなか濃厚そうですね

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前述したようにレムナント出版では『月刊レムナント』なる雑誌(紙版500円。Kindle版だと380円)も発行しているのですが、そちらもまた同様のオカルト記事で埋まっています

古い号であればKindle unlimited枠に入っているので、ためしに2013年12月号を斜め読みしましたが……うん、オカルト雑誌ですね。しかも、いかにもオカルトめいたつくりならまだしも、科学を装ったオカルト(擬似科学)なぶんタチが悪いです

なにしろ2013年12月号の特集は「日本人とユダヤ人のDNA その近縁と同祖」ですからね

科学を援用して日ユ同祖論を立証しようというのですが……もちろん科学を模しているだけのトンデモであることは言うまでもありません

この特集「日本人とユダヤ人のDNA その近縁と同祖」で書かれた文章で、どうしても見逃せない箇所がひとつ

"日本人の遺伝子は中国人や韓国人のものと大きく異なる"

この一文で、なぜ現代の日本において、日ユ同祖論のようなオカルトが持て囃されるのかわかった気がします※

それは中国人・韓国人への差別意識です

中国人・韓国人と同じに見られたくない→ユダヤ人ならお金持ちだし西欧の価値観に完全に染まってなくてもいいっぽい→日ユ同祖論

……という意識の流れが手に取るようにわかります

脱亜論の昔からなにも変わらぬ差別意識ゆえ、現代日本のウヨたちは、あからさまなトンデモ日ユ同祖論なんかに飛び付いているのです

なお、差別意識の現れた記述と同様の文章は、『月刊レムナント』2019年10月号の特集「DNAでわかった 日本人とユダヤ人の親戚関係」にも書かれています


※戦前、そして1980年代に流行した日ユ同祖論は、今再び力をつけています。久保有政さんや小坂達也さんだけではないんです。80年代の代表的な論客・宇野正美が数十年ぶりに新刊を出し、ユダヤ人が書いたという触れ込みの書籍『日本人に謝りたい―あるユダヤ人の懴悔』が復刊され、「スピリチュアル系」のウヨたちが盛んに日ユ同祖論を唱える世界に僕たちは生きているのです


久保有政とは何者か③ ウヨの歴史修正主義者


『月刊レムナント』2013年12月号には「自虐史観から抜け出たとき」という記事もあります

そちらから順に引用していきましょう

"これまで私たちは、戦後のGHQ(マッカーサー占領軍)による「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」によって、「戦争への罪責感を日本人に植え付ける教育」を受けさせられてきました"

"またその動きに便乗した共産党員による自虐史観の植え込みなどによって、「日本は悪い国、侵略国家」だと思わされてきました"

はい、ウヨさんたちの間でまことしやかに囁かれているWGIP陰謀論ですね。この感じだとコミンテルン(国際共産党。1943年に消滅)陰謀論も入ってそうです

細かい説明は省きますが、どちらもただの陰謀論です。陰謀論じゃないという人は、WGIP陰謀論やコミンテルン陰謀論を肯定的に書いた学術論文(査読を通ったもの)を持ってきてください

"私たちはずいぶんと、ウソやデマで洗脳されてきた。しかしそういう自虐史観のもとでは、福音は決して正しく伝わるものではありません。福音宣教のためにも、私たちは日本がどういう国であるかということをしっかり知る必要があります"

なぜ「自虐史観」だと福音が正しく伝わらないのか、ちょっと意味がわかりません


前フリの終わったところで、いよいよ歴史修正がはじまります

"日本軍の南京占領の数日後には「平和よみがえる南京」「昨日の敵に温情」といった特集記事も掲載されていました。(中略)それらはすべて、私が聞かされてきた事柄と全く違う光景だったのです"

↑は南京大虐殺に疑問をもった久保有政さんが、自ら当時の新聞にあたった際の感想だそうで……

当時の史料に直接当たるのは、最低限の史料の読み方を身につけてからでないと……という好例ですね。史料の読み方を身につけていないと、自分の見たいものしか見れなくなるのです。久保有政さんってば、ものの見事に大日本帝国のプロパガンダにひっかかっていますね


あまりにもあんまりな南京大虐殺否定論を終えると、次の標的は韓国です

"日韓併合時代、日本はいつも、持ち出しでした。日本人の税金をつぎ込んで、貧困と不衛生にあえいでいた朝鮮半島に学校、病院、工場、また様々な施設をつくって、朝鮮半島を近代化していったのです。奪ったどころか、与え続けていきました"

ようするに植民地肯定論ですね

本邦のウヨさんはなぜか植民地にいろいろな施設をつくったのは日本だけだと思いがちですが、そんなことはありません

世界中の帝国は、大日本帝国と同様、植民地を開発しました。故に世界中の元帝国には、日本と同じように植民地肯定論者が存在します

しかし、世界中の植民地肯定論者は、たとえばそれが言論人であったり政治家であった場合は、極右としてきちんと職をおわれます(最近はそうでもなくなってきましたが……)。日本ではむしろ世間の人気者となったり政権から気に入られたりします

世界の、そして日本の植民地肯定論者には、どれだけ開発したかしか見えておらず、どれほど収奪したか見えていません(ウヨ☆トリック1「切り取り」)

大日本帝国が植民地朝鮮にした仕打ちで見ると……

たとえば大日本帝国は1920年から朝鮮で「産米増殖計画」を実施し、米の増産に成功しました。朝鮮から日本に持ち出した米の量は、1931年には増殖実施前に比べ19倍近くに達していました(不当に安く買い叩かれたため、多くの農民は小作人に転落。ウヨさんたちが喧伝する「故郷では食えないから自ら望んで日本にやって来た朝鮮人」が多数生まれました)

一方、朝鮮人1人当たり消費する米の量は、増殖実施前の半分近くまで落ち込んでいます

これでよく植民地支配を肯定できたものです

なお、上の「産米増殖計画」にまつわる話は中塚明『これだけは知っておきたい 日本と韓国・朝鮮の話』を参考にしました

ウヨさんは一次史料(笑)よりも、『これだけは知っておきたい 日本と韓国・朝鮮の話』のようなちゃんとした入門書を読んだほうがいいでしょう


さて、ひととおり歴史修正主義的な発言が終わったあとは、再び「自虐史観」とキリスト教の話です

"教会においても、自虐史観に基づいた宣教は、必ず失敗します。福音の真理を、虚偽に混ぜて伝えることはできません。教会の役目は「日本は悪い国だ」と言うことではないのです。「日本は神に愛された国です!」と伝えることこそ、じつは「日本宣教の突破口」となり得えます。先日、あるクリスチャンの会でそう話すと、聴衆のみなさんが大拍手してくれました"

こ わ い(人類の以下略)


……と、まあ『月刊レムナント』2013年12月号に記されたウヨ言説はだいたいこんなところです

もし万が一、「もっと久保有政さんのウヨ話が聞きたい!」という人がおられても、早まって『月刊レムナント』を買う必要はありません

実はレムナント出版が運営する「キリスト教読み物サイト」にウヨウヨしい記述が満載なのです( ≧∀≦)ノ


おわりに


今日の紹介で、久保有政さんが彼なりのキリスト教信仰に従って歴史修正主義をやっているのがわかってもらえたかと思います

そして"彼なりのキリスト教信仰"というのが、創造論と日ユ同祖論に基づいた、一般的なキリスト教信仰から遠く外れたものであることも、理解していただけたでしょう

土台(キリスト教)がダメダメでは建物(歴史)も歪になってしまうという見本みたいな人ですね


今回調べていて思ったのは「一部のウヨ言説は、僕が想定していた以上にオカルトと親和性が高い」ということ

僕はオカルトや宗教はわりと好きだったりするのですが、ウヨと結びつかれると話は別です。今後も機会があれば「日本を愛するキリスト者の会」やその他宗教者のウヨを紹介していければ、と思います


補足


最後に、前述した久保有政さんのプロフィール(http://www2.biglobe.ne.jp/~remnant/kubo.htm)から、彼が役職をつとめる団体について軽く述べてから終わりましょう


・神戸平和研究所(理事)


株式会社サンビルダー内にあり、ここの会長である杣浩二さんが理事長です。で、杣浩二さんの著作が日ユ同祖論関係。杣浩二さんは「日本を愛するキリスト者の会」理事でもあります

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・聖書と日本フォーラム(理事・常任講師)

ホームページを見て頂ければわかるように、こちらも日ユ同祖論関係。YouTubeにチャンネルをもっており、久保有政さんが「天皇家のルーツはユダヤ!」と吠えている動画(https://youtu.be/5IVwaNOxHuc)があったりする。会長の畠田秀生さんは「日本を愛するキリスト者の会」理事でもあります


・日本民族総福音化運動協議会(理事)

手束正昭 日本基督教団高砂教会元老牧師が総裁。高砂教会は知る人ぞ知るウヨ教会で、有名ウヨを招いた講演会を数多く開いています。手束正昭さんは「日本を愛するキリスト者の会」副会長であり、強烈なウヨ思想の持ち主。このため、「日本を愛する~」のウヨ思想を主導する立場であると思われます

また、日本民族総福音化運動協議会には「神戸平和研究所」の杣浩二さんや「聖書と日本フォーラム」の畠田秀生さんも評議員として参加しています

……以上。