ウヨたちの使うトリックを解析していくシリーズ「ウヨ☆トリック」

第2弾で扱うトリックは「中立ぶる」です

どれだけウヨウヨしい立場や意見でも、こいつを使えばたちどころに「冷静で偏りのない」ものへと変化する、たいへん使い勝手のよいトリックです

無自覚にこのトリックを使っているウヨも多いですが、日本会議関連団体は自覚的に他者を騙すため「中立ぶる」ので、このトリックのことは是非とも覚えておいてもらいたいですね


中立の効用


なぜウヨたちは「中立ぶる」のでしょうか

もちろん自分の立場を中立に見せたいからだ、というのが答えですが、では、他者から中立に見られることにはどのような効果があるのでしょうか

一般的に中立とされる意見とはどのようなものなのか確認していきましょう

・偏りのない公平な意見

→故に意見に反論がある者は思想的に偏りがあるとみなされる

・冷静な意見

→故に意見に反論がある者は「発狂」とみなされる

また、上記の2つに派生して、

・(偏ったものでないから)普通な意見

→故に意見に反論がある者は「変」だとみなされる

・(冷静だから)論理的な意見

→故に意見に反論がある者は非論理的とみなされる

さらに一点、中立の効用を付け加えるならば、

・議論の場所を明らかにする(どのラインから左右に別れて論争すべきかを提示)

→故にラインから大きく逸れた場所で論を展開すると見当外れとみなされる

……と、だいたいこんなところでしょうか。まあ、「頭良さそうに見える」とか、そういうのもあるでしょうが

このように「中立」は当事者では手に入れることのできない絶対的な第三者としての力を持っているわけです

これほどまでの力を持っている以上、本来であれば「中立」は、当事者たちを遥かに越えた知識なり権威なりが担保として必要です(スポーツの審判や裁判官などを思い浮かべてください)

しかし、「中立」を名乗る者が本当に「中立」たりえるかを考える人は非常に少ない

これはもう、本当は「中立」とは程遠い存在でも「中立」を装いたくもなりますよね

ウヨが無自覚にせよ自覚的にせよ「中立ぶる」のはこのためなのです


さらに「中立」には、ウヨにとってお得な面があります

たぶん当ブログでも何度か指摘していることですが、歴史修正主義者たるウヨにとっては、「論争」があると一般人に思い込ませれば勝ちなわけです

「慰安婦」問題や南京大虐殺、関東大震災朝鮮人虐殺に沖縄戦集団自決などの否定論は、そもそも論として成り立っていないのですが、学問の世界で定説とされているものにイチャモンをつけて【論争っぽいもの】をつくりだすことによって、一定の支持者を得ることができます

反進化論をお題に【論争っぽいもの】の効用を説明した文章がありますので↓に引用します

"通常の科学説も一つの仮説、反進化論者の主張も一つの仮説というふうに並べてしまえば、どちらの妥当性もフィフティ・フィフティだという印象が生まれるでしょう。確率が半々であれば、信者は反進化論を堂々と選べるわけです"
(中村圭志『知ったかぶりキリスト教入門 イエス・聖書・教会の基本の教養99』より)

たとえフィフティ・フィフティのどちらか一方を選ばなくとも、一般人をして「なんだか論争があるんだなぁ」と思考停止に陥らせることは可能です

そして「中立」は、論争があることを前提として成立するものです

つまり歴史認識問題において、「中立」の存在は、本来なら歯牙にもかけられなかった否定論に生きる場所を与えるものなのです

では、右派がどのように「中立ぶる」 を使っているのか見ていきましょう


中立ぶる①ーー普通の日本人ーー


もちろん例外はいますが、激しくウヨい者ほど「普通の日本人」を自称します

彼・彼女らの決まり文句は「右でも左でもない普通の日本人」というもので、自分は偏った思想に染まっていないという自己像を振り撒いているのです

もうちょっと頭の良いウヨになると、「私は◯◯(安倍・自民・日本など)のことも批判しているぞ!」と言って偏っていないアピールをします

どちらにしても「自分は普通で、左は変」と言いたいがために「中立ぶる」をつかっているわけです

また、「中立ぶる」のなかでも「普通の日本人」を強調することの効用はもうひとつあります

女性ウヨの姿を記した北原みのり・朴順梨『奥さまは愛国』から、ヘイト団体「日本女性の会 そよ風」の演説風景を引用しましょう

"「みなさん、普通の頭、常識で考えてみて下さい。売春婦記念日をつくるって、笑っちゃいませんか? 世界中に売春婦いるんですよ? その人たちの記念日つくるって、普通に考えておかしいと思わないですか?」"

"この女性は「普通に」「普通の頭」「普通の常識」を連発していた。"

"「(売春婦であった過去は)恥ずかしくて名乗りでない、それが普通の日本人女性の心ゆきだと私は思います」「韓国人でも、本当に当時売春していた人は名乗りでていないのではないかと思います。それは、当然、恥ずかしいからです。普通の頭で考えますと、わかっていただけると思うんです」"

どんな聖人でも、差別的な感情をどこかに持っているものです

「そよ風」の演説は「普通」を連発することによって、差別的な感情は自戒すべきものでも隠すものでもなく、おおっぴらにしても「普通」なのだと訴えているのです

まさか「そよ風」の演説を聞いて、あれが普通だなどと思う人はいないでしょうが、【ここは越えてはいけないライン】が後退していく人は確実に存在します

「普通の日本人」の力によりラインが後退に後退し続けて、現れたのが現代日本における一億総反コリアンとでも言うべき状況です

ここで見逃してはならないポイントは、歴史学が史料や検証の積み重ねで成長するのに対し、歴史修正主義はヘイトを糧に力を増すことです

まとめると「普通の日本人」は、左派を変だと攻撃しつつ、一般の日本人の【越えてはいけないライン】を後退させ、歴史修正主義を加速している、ということになります

ナントカのひとつ覚えで「普通の日本人」をやっている者ばかりでなく、その効果を狙って明確な悪意から「普通の日本人」を名乗っているウヨもいるのかもしれません

自覚的に「普通の日本人」を自称するウヨを相手にするとき、カウンターは「お前なんて普通じゃない」とウヨ本人も百も承知な言説で対抗するのではなく、人権という原理原則を用いることが肝要です


中立ぶる②ーーI have black friendsーー


いまでは差別主義者の論法として名高い「I have black friends」ですが、これも「中立ぶる」の一形態です

「I have black friends」とは"ざっくり言ってしまうと「自分の友達には差別対象もいるから、自分には差別意識が無いんだ」というもの"

けっこう浸透してきているはずなのですが、いまだにそのまんま「友人がいる」をやっちゃうウヨがいるので笑えますね。よほど人権問題に興味のないのでしょう

差別対象の友人がいないウヨさんは「中華料理は好き」「Kポップは好き」などと変形させ「だからこれは差別じゃないんだ」と言い訳します。明らかに「I have black friends」の変形ですね。ヘイト言説への対抗に文化交流を推す声をときどき耳にしますが、そんなものまるで役に立たないということです

また、ウヨさんは「親日的な◯◯人なら良いんだけどね」などと物分かりの良さそうな言葉を吐くことがあります。「親日的な相手とは付き合う準備があるんだから、自分には差別意識はないんだ」ということで、これもまた「I have black friends」の変形と見ていいでしょう

かつて韓国にあった軍事独裁政権(植民地時代から日本に通じていた知日・親日政権)とお友達だった日本のウヨ政治家たちーーその精神的遺伝子を継ぐウヨたちがコリアンへの差別心を露にしている現状を見るにつけ、「◯◯人の友人がいる」が差別を正当化する論法にすぎないのは明らかです

もしウヨさんたちが「中立ぶる」の一環として「I have black friends」やその変形パターンをやり始めたら、盛大に笑って無力化してあげましょう


中立ぶる③ーー助っ人外国人(?)ーー


誰が言ったか「日本人は白人の言うことに弱い」という言説

これは【白人が支配者層を占める国家は文明レベルが高い……という幻想】が主な原因かと思いますが、【国内のシガラミのない、外からの意見だから信用するに足る……という錯覚】も従の原因としてあるでしょう

この錯覚を利用しているのが「中立ぶる」の一種「助っ人外国人」です

どれほどウヨく、荒唐無稽な意見でも、外国人が言っているだけで中立な意見に思えてしまう(人もいる)という恐るべきトリックであります

とても効果的なので、かつてのウヨは外国人の名を騙り、著書を刊行していました

有名どころでは、イザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』。これは保守論客だった山本七平さんがユダヤ人になりすまして書いた日本論。ただの日本論ですませておけばよかったものを、保守系論壇誌『諸君!』でウヨウヨしだしたのだからたまりません。左派の追及でアッサリ正体が割れました

もう一冊、忘れてはならないのが、最近自費出版で復活して売れに売れているモルデカイ・モーゼ『あるユダヤ人の懺悔「日本人に謝りたい」(復刻版)』。こちらの正体は、翻訳者とされている久保田政男さん……のはずです(https://www.project-syndicate.org/commentary/the-jewish-conspiracy-in-asia?barrier=accesspaylog)。ユダヤ陰謀論とレイシズムの極地たる一冊で、現在でいう「スピリチュアル」系のウヨ本となっています。なお、復刻版の販売を担当しているのが、あのDHCシテレビから追い出された浜田マキ子さんの「林原チャンネル」です

外国人にしてもなぜユダヤ人!?と思った人もいるでしょうが、反ユダヤ&それの反転したユダヤ賛美は日本のウヨにとって戦前からの伝統芸です。これには「日ユ同祖論」や世界的に有名なユダヤ陰謀論が絡んでくるのですが……その話はまた別の機会に

他にもポール・ボネ『不思議の国ニッポン』=藤島泰輔は有名ですね

マイナーどころではマイケル・アームストロング『日本人に感謝したい―アメリカの対日戦略成功の秘密』=宮崎 正弘(http://sorceress.raindrop.jp/blog/2010/12/#a001268)なんてのも……

いやー、ほんとウヨさんって高潔ですよね! 

外国人のふりをして日本にウヨ言説をばら蒔くその手腕には恐れ入ります

現在は偽外国人を装うまでもなく、多くの外国人がウヨの手先として働いています(まあ昔もいたんですけどね、ウヨ外国人……)

ケント・ギルバートを筆頭にヘンリー・ストークス、ロバート・エルドリッヂ、ペマ・ギャルポ、トニー・マラーノ(テキサス親父)、ジェイソン・モーガン、マイケル・ヨン、シンシアリー、グレンコ・アンドリー、ナザレンコ・アンドリー、エリ・コーヘン、崔吉城……その他様々な国や人種の人々が日本ウヨのため日夜頑張っています(最近飽和気味?)

相手が外国人だからといって「国内のシガラミとは無関係だから、きっと真実を語っているに違いない」と錯覚しないことが肝要です


中立ぶる④ーー日本会議関連ーー


日本会議が活動テーマごとに別動隊を組織するのは、今ではよく知られた話です

別動隊はたいていの場合、その正体を隠して「中立ぶる」を使います

想像ですが、日本会議が別動隊をつくる理由の半分くらいは正体を隠して「中立ぶる」ためにあるのではないでしょうか

組織された別動隊のメンバーをつぶさに見ていけば、決して「中立」ではないのは明らかですが、日本会議は気にしません。なぜなら、そこで「中立ぶる」を見抜き、なおかつそれを問題視するような人間を日本会議は相手にしていないからです

有名ウヨが「中立だ!」と言い張れば中立だと思い込む一般ウヨや、わざわざ調べる気力のない一般層さえ騙せればそれでいいのです

そうした別動隊の最近の例で言えば、2019年6月19日に設立の記者会見が開かれた「憲法を国民の手に! 言論人フォーラム」があげられます

「言説人フォーラム」は、護憲派改憲派関係なしに憲法について議論しようぜ! という趣旨のもとで設立された団体……というふうに自称しています

「言論人フォーラム」の呼びかけ人の1人である有本香さんも、

"改憲派、護憲派の別なく、学者や作家、ジャーナリストに留まらず、実業界や芸能関係までの幅広い人たち。ただし、ただちに憲法論議を進めるべきとの問題意識を共有する人たちの会だ"

と言っているのですが……

実際は、もちろん改憲集団です。つまりは「中立ぶる」を使っているのです

当ブログでは3回に渡り「言論人フォーラム」を扱い、この団体が日本会議関連団体であること、メンバーの大部分が改憲派であることを明らかにしてきました





また、日本会議関連団体である「放送法遵守を求める視聴者の会」は、視聴者の質問"特定の政治的主張をもっていますか?"に答えて、

"いいえ。本会は特定の政治的主張は持っていません。いかなる立場の政治的主張であろうとアンバランスで極端に偏向した姿勢での報道は許されないと考え、政治的立場がどうあれ公正な報道姿勢が守られていない限り、その是正を求めてゆくのが本会のあり方です"

……と清々しいくらいの嘘で"中立ぶる"を使用しています


集団的自衛権の容認する安保法案を後押しする別動隊「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」では、

"現在、国会で行われている平和安全法案の審議は、集団的自衛権の限定的容認をめぐる政府見解の合憲性や過去の政府解釈との整合性など、憲法解釈論争に焦点がおかれている。だが、最も重要なのはわが国周辺の安全保障環境の変化に着目し、現実的な審議をすることである"

といった具合に、憲法解釈論争を明確に避けつつ、あくまでも"(安全保障の観点から)審議をすること"を求めています。団体名が"早期成立を求める"なのに……

つまりは「中立ぶる」ことによって、論点の中心をズラしているわけなんですね

安保法案の可決が目的なのに「中立ぶる」を使用し"(安全保障の観点から)審議をすること"を求めることによって、「(我々の望むとおりの)審議に応じないのは卑怯!」という世論を生み出すわけです


……と、まあ比較的最近のものばかり3点、日本会議関連団体をあげてみました

ウヨウヨしい連中が「中立ぶる」を使った新団体を立ち上げたときには、メンバーひとりひとりを精査して判断することが大切ですね


おわりに


ウヨ☆トリック2「中立ぶる」、いかがだったでしょうか

一般人ウヨの場合、無自覚にこれを利用している例が多いとは思うのですが、日本会議関連などでは明らかな悪意をもって「中立ぶる」ことがあり、書かないわけにはいきませんでした

その日本会議も自覚的な「中立ぶる」の使い方はまだまだ甘く、僕レベルのウォッチャーでもそのトリックを見抜くことができます

しかし、今後はどうなるかわかりません

ウヨどもの「中立ぶる」が巧妙化しないうちに、それに対抗できる力を持つ必要があります


補足


今日はあくまでウヨの「中立ぶる」を扱いましたが、一部の日本型リベラル知識人の是々非々な態度もたいがいですからね!

……うーん、僕って「中立」だなぁ