我が国の首相は、時としてウヨさんからさえ「あいつ本当に保守なのか?」と疑問をもたれるアレな人です

それもそのはず、安倍晋三が神戸製鋼に勤めていたサラリーマン時代の上司・矢野信治さんによると、

"彼が筋金入りのライト(右派)だなんて、まったく感じませんでした。あれは間違いなく後天的なものだと思います。(中略)周りに感化されたんでしょう。まるで子犬が狼の子と群れているうち、あんなふうになってしまった"(青木理『安倍三代』より)

"まるで子犬が狼の子と群れているうち、あんなふうになってしまった"

ウヨさんの好きなワードをつかうならば、【洗脳】ということになるでしょうか

つまり【洗脳】されるまでは、ウヨくもないただのアホボンなわけで、ウヨ業界・政治の知識に疎くても仕方がないわけです(それにしても物を知らなすぎですが)

安倍晋三を【洗脳】した狼(笑)の1人に、八木秀次さんがいます

2019年6月20日に配信された文化人放送局の『生田のいくバズ』において、八木秀次さんが安倍晋三への【洗脳】ぶりをアピールしていたので、今日はその話をしていきましょう


文化人放送局と生田よしかつ、そして八木秀次とY染色体について


……と、その話の前に、まずは前提知識をいくつか書いておきましょう

文化人放送局と生田よしかつ

文化人放送局はYouTubeで動画を配信しているチャンネルです。ようはDHCテレビやチャンネル桜と同類のネットTVですね

文化人放送局はいくつかの番組を配信しているのですが、なかでも有名なのが『報道特注』です

少し古い(2017年)うえリテラですが、『報道特注』について書かれているので、少し引用してみましょう

"司会の生田よしかつ氏(築地市場のマグロ仲卸三代目)のもと、自民党広報副本部長の和田政宗参院議員、最近も「朝日新聞、死ね」ツイートや「犯罪者」発言で話題の日本維新の会・足立康史衆院議員、経済評論家の上念司氏というレギュラー陣が、しばしばアルコールと見られるグラスを傾けつつ、デマと陰謀論丸出しでマスコミや野党をバッシングしまくっている番組だ"

"さらに準レギュラーには、作家の百田尚樹氏やレイプ告発を受けている安倍官邸御用ジャーナリスト・山口敬之氏もいる。本サイトでも伝えたように、レイプ問題で雲隠れしていた山口氏は、10月28日に放送された『報道特注』の「第一回ファンクラブ公開収録」に参加"

記事にもありますが、山口敬之といえば伊藤詩織さんをレイプした疑惑で知られる元TBSの政治部記者ですね

疑惑発覚後の復活の舞台として『報道特注』が用意されていました

そういえばこれ以降、山口敬之復活の話は聞かないですね
伊藤詩織さんの件が世界的に広がってしまったからでしょうか?  

記事の続きには、安倍晋三が「報道特注」出演を熱望しているという話や"「官邸の秘書官も、ほとんどすべての人が『報道特注』見てますし。で、主要閣僚も『報道特注』見てますよ」"という話も載っていてすげえヤベエ臭いがしますね

そんな『報道特注』で司会をつとめる生田よしかつさんの番組が、本日取り上げる『生田のいくバズ』というわけです

八木秀次

八木秀次さんはもはや説明不要な感もあるウヨ界の大物ですね
モラロジー研究所のある麗澤大学の教授であり、安倍晋三のブレーンの1人です
同姓同名にアンテナで有名な人がいますが、もちろん別人

もともとは「新しい歴史教科書をつくる会」にいましたが、教科書採択戦の不振などもあり、日本会議系をはじめとした多くのメンバーを引き連れ独立しました。「日本教育再生機構」をつくり、新たなウヨ教科書会社である「育鵬社」を生みました


また「特別の教科 道徳」誕生にあわせて、育鵬社に代わる新しい教科書会社「日本教科書」を設立しました

日本教科書は『マンガ嫌韓流』で有名な「晋遊舎」の関連会社ということもあり、ウヨウォッチャー界では随分と話題になりました

育鵬社のほうはフジサンケイグループの扶桑社が100%出資する子会社です。フジサンケイグループは銭に厳しく、採算のとれない育鵬社では道徳教科書の出版が許されなかったので、晋遊舎に白羽の矢がたった……と推測されています(季刊『社会運動』2019年4月<434号>より)

八木秀次とY染色体

八木秀次さんは「神武天皇のY染色体を継承できるのは男系男子だけ! だから天皇は男系じゃないといけないの!」という主張をしています

男系天皇を正当化するため、科学を濫用しているんですね

「男系天皇が良い」と主張するなら変に科学をつかわなくてもよさそうなものですが……科学を装えば馬鹿が騙されやすくなるだろうという、なんとも浅はかな考えが透けて見えます

このように自説の都合にあわせて科学を引き寄せるしぐさを人はやりがちですが、まあ、ダメですよね

オカルトビジネスのドンと呼ばれた故・船井幸雄さん及び船井チルドレンが頻繁に「量子力学」を援用していることを思い出していただければ、そのダメさ加減がわかろうというものです

こうした態度は必ずトンデモを引き寄せます

そもそもちゃんとした記録の残っていない神話上の登場人物にまでY染色体が辿れると思っているのがトンデモですね

また、仮に神武天皇なる人物がいたとしても、Y染色体をもつ人間なんて臣籍降下していった人々の子孫を含めれば掃いて捨てるほどいるので、「神武天皇のY染色体」なるものにどれだけの価値があるのか……このあたりのことがわかっていないのもトンデモみが深いです

で、ここから先はガチで科学の話になるので僕ではちょっと理解できず、記事の紹介だけにしたいのですが……

実は"私たちは先祖のほとんどからDNAを受け継いでいない"らしいのです


"たとえ私たちが源氏の直系の子孫であっても、源氏の遺伝子を受け継いでいる可能性はほぼゼロだ。しかし、別の見方をすれば、直系の子孫だろうがそうでなかろうが、源氏の遺伝子を受け継いでいる確率は(ものすごく小さいけれど)ほとんど同じなのだ"

引用文の"源氏"を神武天皇に入れ替えれば、そのY染色体を尊ぶ愚かさがわかろうというものです

なお、キクマコこと菊池誠大阪大学教授も八木秀次さんのY染色体理論を批判し、"「ニセ科学」と断言していいでしょう"とまで言っています。キクマコもたまには良いことを言うのです


安倍晋三、たった35分のレクチャーで男系天皇論者に


さて、いよいよ本題です

件の動画で八木秀次さんは、生田よしかつさん相手に男系天皇の重要性を語っています。この動画に限らず、男系の重要性をウヨ同士で確認する気持ち悪いムーヴメントは、令和フィーバー後のひとつのトレンドと言えそうです

これは女性宮家を創設しなければ皇室の存続が危ぶまれることが周知されてきたことへの危機感と、周知されたことをむしろ奇貨としてウヨ界にとって都合のいい者を皇族にしてしまおうという悪巧みがあわさってできたトレンドでしょうか

動画の14:05に八木秀次さんの「安倍晋三【洗脳】自慢」みたいなものがあるので、引用させてもらいましょう


"安倍さんが官房長官になったばかりのときに、私、説得に行きまして、

35分間時間つかってね、男系継承の説明をしたわけですよ

そしたら最初は全然興味なかったんですけども、

いやいやそういう話じゃありませんからって、そう説明したら、

まあ、あの人は理解力がありますから、
「ああ、よくわかった。総理と話してみるかなあ」って……"

八木秀次さんが男系継承について安倍晋三にレクチャーしたことは広く知られていますが、まさかこんなにお手軽だったなんて!

さささ35分?!

し、か、も。現在の八木秀次さんはあまりY染色体のことを言わなくなりましたが、当時ならば確実にYってたはず!
トンデモでしかないY染色体理論を持ち出されて"ああ、よくわかった"って!

"最初は全然興味なかった"くせしてYされたら"ああ、よくわかった"んだって!

"最初は全然興味なかった"という言葉は衝撃的です

なにしろ安倍晋三といえば、官房長官時代から強硬な男系天皇論者として有名です。まさか八木秀次さんのレクチャー以前はまったく興味がなかったとは……

天皇及び皇室は日本の在り方を左右します。これは思想の左右に関係ありません。右にとっては言わずもがなですが、左にとっても【生まれによって高貴な者とそうでない者を区別する暴力的な装置】としての天皇・皇室は廃止すべき存在でしょう

それほど国民にとって重大な案件での態度を、安倍晋三という男は、Y染色体理論のトンデモさんのレクチャーを35分間受けただけで決してしまったのです

"まるで子犬が狼の子と群れているうち、あんなふうになってしまった"と安倍晋三の元上司は言いますが、それにしても簡単に感化されすぎじゃないですかね……

『23分間の奇跡』の子どもたちじゃねーんだぞ(゚Д゚#)


あ、最後に一応断っておきますけど、僕は女系とか男系とかどーでもいいっす。天皇制を廃止してくれればそれでオッケーすわ