2019年5月24日、京都地裁において「フェミ科研費裁判」がはじまりました

これは杉田水脈議員を被告とする名誉毀損裁判であり、ウヨい権力者とその取り巻きたちによる横暴に抗うため行われたものです

今後のウヨ権力者の動向を占うものとなる可能性があるので、僕も野次馬根性を発揮して傍聴に行ってきました


「フェミ科研費裁判」とはなにか?


そもそも科研費(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)とは学術研究に対して日本学術振興会が助成するお金のことです。このお金は国民の税金によって賄われています

2017年12月13日、産経新聞は「結託する反日」シリーズの一環として、彼らが「反日」と認定した歴史研究に税金(科研費)が使われていることを疑問視します

2018年2月26日、産経新聞の記事をもとに杉田水脈議員が衆議院予算会議で科研費についての質問をします

"科研費を使って韓国の団体と一緒になって反日プロパガンダをやっている"
というトホホ感溢れる陰謀論をぶちまけて世間の失笑をかいました

ここまでならアホ新聞とバカ議員が手を組んで醜態を晒したにすぎないのですが、彼女たちにはSNSという強い味方があったのです

産経が焚き付け、議員が国会で質問し、ウヨがSNSで爆発的に拡散する……という凶悪コンボのできあがりですね

なにより恐ろしいのは、産経&杉田水脈議員が今回の件に限らず、このコンボ技をあるていど意識的に使いこなしている点です

……と、いうわけで2018年3月8日。一人のウヨが「大阪大学・牟田和恵教授らの科研費17百万円に無駄遣い、反日悪用疑惑がある」と呟きました

この「発見」は様々なウヨの間で共有され、牟田和恵教授とその仲間たちのプロジェクト(JSPS科研費基盤(B)「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」JP26283013平成26-29年度)は集中攻撃の的とされてしまいます

ウヨらの主張は「反日活動に税金(科研費)をつかうのは、科研費の不正使用だ!」の一言に集約できるでしょうか

当然、杉田水脈議員もこのSNS上の集団リンチに参戦。科研費データベース(https://kaken.nii.ac.jp/ja/)における「反日」学者の検索方法をウヨたちに指南し煽動した他、

"ねつ造はダメです。慰安婦問題は女性の人権問題ではありません"

"国益に反する研究は自費でお願いいたします。学問の自由は大事ですが、我々の税金を反日活動に使われることに納得いかない"

……などなど数々の迷言を残しました

杉田水脈議員が、人権や学問の自由についてなにもわかっていないことを証明する発言です

特に前者の場合、「慰安婦問題が事実なら人権問題だが、それ自体が捏造だしね」とするなら杉田水脈議員のポジション的にわかるのですが……(たぶん櫻井よしこならそう言う)

無論、牟田和恵教授も黙ってボコにされたわけではありません

SNS上で応戦する他、本格的な反撃の矢を繰り出します

その第一矢として、2018年3月23日、反論をまとめた文章とあわせ、研究成果のまとめである『架橋するフェミニズム』を電子書籍として刊行(無料)します

そして第二矢として弓につがえられたのが、研究を「捏造だ」「科研費の不正使用だ」と決めつけられた名誉毀損として2019年2月12日に京都地裁に提訴された「フェミ科研費裁判」というわけです

……なお、杉田水脈議員は「わたし科研費に詳しくないしぃ」とこの件に関する取材から逃げたり、かと思えば性懲りもなくまたも科研費について国会で質問したりといったこともあったのですが、今となっては枝葉感が拭えないのでここではhttps://lite-ra.com/2019/03/post-4579.htmlをあげるにとどめておきます

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初公判。杉田水脈、現れず


以上のような経緯ではじまった裁判ですが、実は初公判の前にスッタモンダがありまして

杉田水脈議員ってば、「京都はヤダよー、遠いよー、暴漢に襲われたらどーすんだよー」ってなワガママをぶっこいたのです

無論、裁判所は名誉を毀損された被害者である牟田和恵教授やその仲間たちで構成される原告の希望を優先させました。原告たちが関西在住であることを考えると合理的な判断ですね。杉田水脈議員は東京で裁判を受けたかったら、今度は東京の人に名誉毀損してくださいね

そうした経緯もあり、また、初公判は本人も代理人も出ないことがままあるので、案の定、杉田水脈議員は姿を見せませんでした(代理人も)

裁判について詳しくないので、杉田水脈議員が現れなかったせいかどうかはわかりませんが、朝10時に始まった初公判は10分ていどで終了

牟田和恵教授が法廷に立ち、裁判を起こした理由を述べただけのアッサリ風味でした

述べられた理由は、http://bit.ly/2XmFdZUの「杉田水脈衆院議員提訴にあたっての声明」で書かれた3点と同様だったように記憶しています

・「慰安婦」問題、そして「慰安婦」問題を扱った研究を捏造と述べ発信したこと

・フェミニズムへの無理解から牟田和恵教授らの研究を嘲笑したこと

・ごく当たり前な科研費の使い方をしていた牟田和恵教授らの研究を、さも悪質な使用をしているかのように印象操作を行っていたこと


支援者集会「ここで歯止めとするために」


初公判が終わったら、支援者集会です。場所は京都地方裁判所に併設されている京都弁護士会館でした

裁判では開場と同時に大法廷が埋まったので、これは大勢の人が集まっているだろうなと予想はしていたものの、予想以上の人数が集結しておりマジ胸熱

これほどの人数は原告たちも想定外だったようで、開廷前に予告されていた部屋とは別の、大きな部屋での開催に急遽変更されていました

それでも立ち見がでるほどの盛況っぷり。メディアのビデオカメラなんかも入っており、改めて世間の関心の高さを感じました

壇上にはプロジェクター。そこには櫻井よしこのやっているインターネットTV『言論テレビ』の映像が流れていました

杉田水脈議員と
櫻井よしこが、フェミニズムを馬鹿にし、嘲笑する。あまりにも和気あいあいとした雰囲気の中で。他者を不当に貶め結束を強める人間たちの醜さが、これでもかと表出されています

しばしの待ち時間の後、支援者集会が始まり、弁護団弁護士の上瀧浩子さんにより今回の事件のあらましが語られ、原告や支援者らのスピーチがあったのですが……

これがまあ熱いのなんのって

ときには笑いもおき、終始和やか雰囲気の集会でしたが、原告らの笑顔の裏側には、ハンパないパッションが渦巻いているのが見え隠れしていました

その熱の正体は、怒り

怒りは、力のない創作者が女性のフェミニストキャラクターを思い浮かべるときに類型化しがちなヒステリックなものではなく、抑制された、理知的ともいえるものでした

「捏造」「不正」というレッテルを貼られると研究者生命にかかわる、という怒りも当然ありましたが、そうした私的領域よりも、もっと大きな、公のための怒りという側面が強く感じられました

それは「慰安婦」の存在とその研究を捏造と決めつけられた怒りであり、フェミニズムという学問が積み重ねてきたものを嘲笑された怒りであり、権力の横暴に対する怒りでした

そして杉田水脈議員は、紛れもなく横暴なる権力者です

「なにを大袈裟な……」と見るむきもあるでしょうが、杉田水脈は一議員に過ぎないわけではありません。ウヨ界の人気者なうえ、安倍晋三・自民党政権の子飼いです

集会でも言及がありましたが、彼女は2017年10月の衆議院議員選挙において、比例中国ブロックで当選しています。小選挙区では立候補していませんでした。安倍・自民党としては、どうしても欲しい人材だったということです

彼女の担った役割はヘイト・歴史修正主義によるコアな支持層の確保と世論誘導、「炭鉱のカナリア」的ポジション(どこまで過激な発言をしても世間はスルーしてくれるのかを調べる)……というのが大方の見方です

つまり杉田水脈議員の過激な言動の裏には、ウヨ界と現政権がついているのです

故に、牟田和恵教授らの怒りは、杉田水脈議員ひとりに向けられているわけではありません
その向こう側にいる強権的な権力者に向かっているのです


現在、日本の権力者による横暴は目に見える形で確実に深化しています。今回の裁判の発端となった科研費バッシングもその流れの中で起こったことです

支援者のひとりである竹信三恵子さんは、マルティン・ ニーメラーの『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』を引いたうえで、「科研費バッシングと相似の事件が立て続けに起きている」と言いました

竹信さんの念頭にあったものは、国家権力の弾圧に晒されている関西生コンでした
「日本一強い労働組合」である関西生コンは、右派メディア・極右議員・SNS・有名ヘイターのスクラムによって世論を誘導され、国家権力による不当逮捕にあえいでいます

それほどまで、現代日本のウヨ&権力者は強い。横暴はとどまるところを知らない

牟田和恵教授は「権力者にとってはわたしたちなんて虫けらにすぎません」と言いました

誰かが、横暴の深化を止めなければならない

牟田和恵教授とともに原告のひとりとなった岡野八代教授は「ここを歯止めにするために」と決意を述べました

「ここを歯止めとするために」

僕たちは連帯し、ともに戦わなければなりません