僕はときどきサムシングでグレートな本を求めてブックオフをさまようのですが、先日はまたトンデモな本を発掘してしまいました

それがこちら
池田整治『マインドコントロール』(ビジネス社、2009年)です

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池田整治さんの肩書きは「陸上自衛隊1佐、小平学校人事教育部長」とあります

つまり執筆当時の2009年時点では、現役の自衛官だったことになります(現在は退任)

ブックオフの棚から取り出して最初のほうを読むと、池田整治さんはオウム真理教のサティアン強制捜査に自衛官として唯一随行した、まさにレジェンド・オブ・レジェンドなんだそうで

オウム関連の話をいっぱい語ってるのかな、と思いパラパラ頁をめくっていくと……その幻想はぶちとばされました

なぜなら『マインドコントロール』には、「イルミナティ」「フリーメイソン」「ビルダーバーグ・ソサエティ」「ラビ・バトラ」「300人委員会」「ロスチャイルド」「戦争犯罪情報プログラム」「ワンワールド」など陰謀論でおなじみの文字列が並んでいたのです

現役(当時)の、しかも陸上自衛隊の学校につとめる自衛官がこんなトンデモ書籍を……ッ!

こいつぁスゲーや、と思い速攻で保護したしだいであります


なお、『マインドコントロール』は版権をビジネス社からTOブックスに移し、文庫化や電子書籍化も果たしています

僕はKindle Unlimitedに契約しているのですが、『マインドコントロール』も対象書籍となっているので、慌てて買う必要はなかったですね
(2019年2月4日現在。ビジネス社版も電子書籍化しているが、Unlimited対象はTO文庫版のみ)

くぅ~、失敗したー


"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"……WGIPもコミンテルンも彼らの支配下だった!?


勘の良い人なら、先述したトンデモワード群を見れば、書籍タイトルの『マインドコントロール』が、オウム真理教の行っていたそれとは違うことにピンとくるでしょう

そう、つまりは右派がよくつかう論法のアレ……

「日本人はマインドコントロールされているんだ!」ナ,ナンダッテー

というアレすぎるアレのことですね

通常のイカレ系右派の場合は「GHQが日本人弱体化のため日本人全体にマインドコントロールを行った!そしてその洗脳はいまなお反日日本人の行動を支配している!」というWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)陰謀論どまりなわけですが、池田整治さんはその遥か先を行っています

WGIP陰謀論をふまえつつ、WGIPを日本人に行ったGHQでさえ"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"
によってつくられ操られている存在にすぎないというのです
(なお、池田整治さんはWGIPに「戦争犯罪情報プログラム」の訳をあてています)

また、右派がよく用いる陰謀論のひとつに「共産党が世界を操っている!日本が大東亜戦争に突入したのは共産党のせい!いまの世界も共産党が裏から支配している!」というコミンテルン(1919年から1943年まで存在した国際共産主義運動の指導組織)陰謀論があります
1943年に解体した組織がどうやっていまの世界を動かしているんだか、といった感じなのですが、池田整治さんによるとコミンテルンもまた"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"の支配下にある卑小な存在にすぎないのだとか

すっげぇ!すげぇなあ
!"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"さんはよぉ!!

……ふえぇ……頭痛いよぉ……
なんでこんな阿呆な主張する人が自衛官幹部(当時)だったのぉ……
(あまりの衝撃に幼児退行してしまいました)


世界を構成する5つの要素!?


池田整治さんによると、世界は5つの要素から成り立っているらしいです

"①決して表に出ることなく、世界を裏から動かしている真の支配者グループ 
②裏の支配者グループから直接指示を受け、表の世界で実際に働く権力者グループ 
③裏の支配者を知らず、表の権力者のために働く(または働かされる)グループ 
④右記の構造など一切知らない普通の人々(世論を形成)
⑤右記の構造を熟知した上で意識向上し、世界を良くするために活動する人たち"

それぞれの具体例として、池田整治さんは以下のものたちをあげています

①はフリーメイソン、イルミナティ、ビルダーバーグ・ソサエティなどの「国際金融支配体制」

②は歴代アメリカ大統領やアメリカ政府高官、経済、宗教、メディアで核となる人物

③は「自由や民主主義」を重んじる官僚や言論人。ようはマインドコントロール(笑)されているオピニオンリーダーたち

そして④の普通の人々のなかから世界の真実(笑)を知り目覚めちゃったのが⑤の「選ばれし者」なのだそうで。いわゆる「目から鱗がとれちゃった」系の人ですね

興味深いのは「選ばれし者」の具体例として安部司さんの名前をあげていることです

安部司さんは食品添加物の害を訴えている、疑似科学業界ではわりと有名な人ですね
彼は今、ウヨ企業の「リアルインサイト」と組んで「加工食品診断士」という民間資格を推し進めています

リアルインサイトについては、このブログ開設当初から取り上げてみたいと思っていたウヨ企業のひとつなのですが、なかなか機会がなくて……

いつか、書きます


押し寄せるオカルトの数々


池田整治『マインドコントロール』はどこを切り取ってもトンデモが現れます
それゆえ、すべてにツッコミを入れるのは、いくら僕でも心が折れる

と、いうわけで、ここでは『マインドコントロール』の第一章に書かれたものだけを取り上げたいと思います

以下の項目を受け入れれば、④の普通人から⑤の選ばれし者に進化できるかもよ?

・"ゲームを行っている時は実際に「攻撃」する時と同じ脳波になることがわかっている。(中略)攻撃のDNAを「オン」にしながら育つわけである"

ゲーム脳wDNAスイッチww

・"外部から微弱の電磁波で脳神経細胞等に作用してマインドコントロールする手段も開発されている。(中略)読者諸兄はぜひ、自ら実態を知って防護してほしい"

頭にアルミホイル巻かなきゃ……(使命感)

・一万年に一度という「文明の転換点」を迎えた今、(中略)これまでかけられてきたマインドコントロールから目覚め、本来の「ヤマトごころ」のDNAをオンにして、新たな役割を演じなければならない"

これはもしや……ウヨ系の政治家さんたちにも信奉者の多い、故・村山節さんの「文明法則史学」というやつではー?(文明法則史学もいつか扱ってみたいネタです)

・食品添加物や砂糖の危険性をメディアが報道しないのは"それらの製造資金を提供する国際金融組織と一体化し"ているから

なんてこった、食品添加物や砂糖の入った食事は支配者層の陰謀だったのか!

・塩素で消毒された水は毒と同じだと断定し、"GHQの対日占領政策の主目的である「日本(人)を弱体化し、将来にわたりコントロール下に置く」ための一環として、水道水の塩素消毒が始められたと考えざるを得ない"

一般のウヨが日本スゴイをするネタの水道水ですら、池田整治さんの手にかかればこうなるんだなー

……と、まあ第一章だけでもこんな感じでして

信じられるか?これが、あと三章も続くんだぜ?


トンデモと右翼思想の融合


池田整治さんのタチが悪いのは、トンデモや陰謀論が右翼思想に結び付いていることです

しかしなぜ、右翼思想が絡んでくるのでしょう?

現代の僕たちは、安倍昭恵さんのせいでスピリチュアル右翼に違和感を覚えなくなりなりましたが、本来、支配者の理不尽を指摘し抗う存在といえば左翼に決まっています

実際、反安倍で反右翼なトンデモ系の人もいる……らしいです(僕の興味の範囲外)

なのに、なぜ右翼なのか?

池田整治さんはトンデモ・陰謀論から右翼思想に行き着くまでに、二段階のステップを踏んでいます

ステップ1:すべてのトンデモ・陰謀論をひとつの超越的な存在に収斂する

水道水の塩素も食品添加物もWGIPもコミンテルンも、元をたどっていけばぜーんぶ超越的な存在="世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"による陰謀だということにします

そんなムチャな……と思わないのが陰謀脳の怖さです

おそらくこの段階で踏みとどまれば、左翼系のトンデモになるのでしょう


ステップ2:日本スゴイの精神を注入する

ここがトンデモ右翼とトンデモ左翼の分かれ目です

池田整治さんは縄文時代や江戸時代を礼賛し、日本人を褒め称えます。例によって例のごとく、白人様のお言葉から日本スゴイをするのも忘れません

そしてそんなスゴイ日本の、真の日本人だけがもつ「ヤマトごころ」は、その霊性の高さゆえに、"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"から常に攻撃を受けているとしています

ここから導き出されるのは「"世界を裏から動かしている真の支配者層グループ"と戦う真の日本人たち!」という荒唐無稽なストーリーです。そして真の日本人になるためには、まずは支配者層のマインドコントロールから抜けださなければならない、というわけですね

このストーリーは、日本人が支配者層を打ち倒すエンディングで"世界の盟主は日本"になるという、そんな妄想に行き着きます

これは、いつか来た道ってやつですね

僕らは歴史に学ばなければなりません
侵略の方便として「大東亜共栄圏」を唱えたクズどもの傍らには、方便を本当に信じてお目目をキラキラさせていた阿呆が大勢いたことを、僕らは忘れてはならないのです
僕には池田整治さんが、お目目キラキラの彼・彼女らとダブって見えます


オカルトビジネスのドン船井幸雄とビジネス社


陸上自衛官のレジェンド・オブ・レジェンドだった池田整治さんは、どうしてこんなトンデモ右翼に成り下がったのか?

その源流のヒントは、もともとの出版元であるビジネス社にありました

ビジネス社といえばウヨ系やスピリチュアル系の出版社としておなじみですね
うちの地元の小規模書店(TSUTAYA・大型商業施設併設)では、政治系の棚はだいたいビジネス社・青林堂・扶桑社で埋まっていて、ちょいと本気で潰れろと思っています

これまでは著者やタイトルだけで回避余裕だったので、ビジネス社の背後関係まで調べる気が起きなかったのですが、良い機会なのでホームページをのぞいてみました

ビジネス社ホームページ

ホームページから「書籍」タグをクリックすると……

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あー!「ザ・フナイ」がある!!

そうなのです
ビジネス社はオカルトビジネス界の巨人、故・船井幸雄さん関連企業なのですね

本日の主役である池田整治さんも『マインドコントロール』刊行当時のビジネス社をこう語っています

"当時100%船井総研持ち株だった"

船井総研(船井総合研究所)は、船井幸雄さんがつくった経営コンサルタントの会社のことですね

現在はビジネス社の編集者・取締役だった唐津隆さんに全株式が譲渡されています

船井幸雄さんといえば斎藤貴男『カルト資本主義』において「オカルトビジネスのドン」と呼ばれた人です

船井幸雄さんは心霊主義+東洋思想の「ニューエイジ運動」に大きく影響を受けていると『カルト資本主義』は指摘しています

また、船井幸雄さんが強烈な民族主義者であり、先に述べた村山節の「文明法則史学」にも共感を示していたことも、『カルト資本主義』からわかります

……そんなアレな人物である船井幸雄さんを、池田整治さんは尊敬し「心の師」とあがめていたようでして

それはもう、信者が教祖に対するそれのような……

"やがて、魂レベルの会長(船井幸雄さんのこと)の役割を知りました。ムー大陸の最後の王様としての役割から様々な民族あるいは国家の指導者として遍歴していました。口の痛みも日本の歴史に残る重大な事件の当事者としての古傷であることもわかりました。そして、その時から日本を覆ってきた闇の影を晴らすために、今生に転生してきていたのです"

……ふえぇ……頭痛いよぉ……(以下略)

と、いうわけで池田整治さんがアレなのは船井幸雄さんのせいでしたー


おわりに


池田整治さんは自衛官を退任され、いまでは立派なヒカルランド芸人です

ヒカルランドとは、徳間書店で船井幸雄さんや井沢元彦さんらを担当していた編集者・石井健資さんのつくった出版社ですね

船井幸雄さん関連の著作やスピリチュアル右翼の著作をガシガシ出していることで有名です

池田整治さんとヒカルランドのホームページを載せておきますので、なにか落ち込むことがあったときにでも彼・彼女らの活躍を見てあげてください

きっと「こんな人たちだって一生懸命生きてるんだ」と生きる希望がわいてきますんで

池田整治ホームページ

ヒカルランドホームページ


補足1

『マインドコントロール』から重要な記述を引用し忘れるところでした

"ちなみに我が陸上自衛隊小平学校の人事教育部では、資質教育の一環として全学生に遊就館の研修へ行かせている。かつての若者が人のために命まで捨てた事実を知ることから、「事に臨んでは身の危険を顧みず、専心職務の遂行に邁進します」という宣誓をした自分との対比で考え、やがてこれまで学校で習った歴史との違いにまず気づく。そしてそれを契機として、暗記式の単なる受験勉強ではない「本当の歴史の勉強」を始める"

勘弁してくれよ、おい……


補足2

池田整治さんは現在、一般社団法人「美し国」という団体で副代表をつとめています

美し国ホームページ

他の副代表には杉田水脈議員の名前もあり……

で、よくよく思い出してみれば、現在「文明法則史学研究所」の顧問をつとめている林英臣さんの政治塾に杉田水脈議員も参加していた過去があり……

文明法則史学研究所ホームページ

林英臣政経塾

もしや杉田水脈議員、スピリチュアル方面でもアレな人だったりして……?