偕行社ホームページ(http://www.kaikosha.or.jp/index.html)によると、2018年11月14日、防衛4団体(隊友会・偕行社・水交会・つばさ会)が合同で岩屋毅防衛大臣に政策提言書を提出したそうです

政策提言書を提出した防衛4団体は以下のとおり

・隊友会(自衛隊OB団体・藤縄祐爾 会長)
・偕行社(陸自OB団体・森勉 理事長)
・水交会(海自OB団体・赤星慶治 理事長)
・つばさ会(空自OB団体・外薗健一朗 会長)

つまりは自衛隊OBの人たちの集まりですね

4団体合同での提言書提出は2018年度で3年目
1年に1度、毎年11月か12月ごろの提出のようです

提言書の提出それ自体は隊友会が1972年以来ずっとやっており、そのうち他の団体もやりはじめていました

しかし2014年に当時の防衛大臣から「4団体でまとめてくれない?」との要請があり、2015年から合同での提言となったわけです


政策提言書の内容

提言書の中身は、毎年あまり変わっていないようです

・グレーゾーン事態(戦争に至らない紛争)に介入するため自衛隊の業務拡大
・米軍との協力関係強化
・防衛産業の育成をはじめとした防衛体制の強化
・自衛官の待遇改善の問題
・防衛医科大学改革(お医者さんが民間に行っちゃって大変!)

など、なるほど自衛隊OBだなあ、と思うような提言内容が多いんですが……

提言書では「改憲」も強く訴えられています


改憲を訴える自衛隊OBたち

改憲の提言は毎年、政策提言書の最初に位置づけられています
そのことから防衛4団体が最も強く訴えたいことが改憲ということが推測されます

では、防衛4団体はどのような改憲を望んでいるのでしょうか?

・国防軍を憲法に明記
・それにともない軍事刑法(軍法や軍事裁判所の整備)
・緊急事態条項
・国民の国を守る義務を明記

……と、いった具合ですが、後半2つがなかなかに問題がありそうです

緊急事態条項は非常事態の際に内閣に権限を集中させるものです
濫用により独裁者を生み出す危険性があります
「先進国のなかにも緊急事態条項を憲法に明記している例があるじゃないか!」と思われる人もいるかもしれませんが、日本ではすで法律の整備によって、諸外国の憲法で明記されているレベルの運用は可能になっています

そして「国民の国を守る義務」ですが、これは論外でしょう
憲法は国家の権力を縛るものであり、国民に義務をかすものではありません
徴兵制への道を切り開いてしまう意味でも、見過ごすことのできない記述です


公務員の採用試験に「防衛知識」を?

防衛4団体が考える「防衛体制の強化」もなかなか踏み込んでいまして……

「防衛知識」を一般的な教養にするため、国家公務員や地方公務員の採用試験の科目にしてくれと訴えています

また、子どもたちに「防衛知識」を教え込むため、現役自衛官やOBを学校教育の現場に呼んでくれ、とも提言しています


日報問題について

2018年度の政策提言書では、イラクやスーダンでの日報を隠していた問題についても書かれています

 "今般の日報問題は、実力組織(軍)としてあるべき文書管理、情報公開、保全等の制度が一般公務と同じ扱いになっていることが背景にあり、自衛隊・自衛官が本来任務に専念するためにも、自衛隊の行動に関する特質を考慮した制度(法令、各種手続き等)へ改善すべきです"

提言書では以上のようにあります
日報を隠していたことを問題にしているのではなく、制度の問題にしているわけです
しかもこの書き方だと、一般的な行政とは違った形での情報公開を求めています

つまり「日報隠しが問題視されたから、そもそも日報を公開しなくてもOKなことにしよう」というふうにも読めるわけです


提言書をチェックする重要性

自衛隊がネトウヨ化しているという報道(https://jp.vice.com/news/crisis-of-self-defence-forces-01)があり、
また2018年4月には自衛官3等空佐が小西洋之参議院議員に暴言を浴びせた事例(http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/05/08b.html)もあります

このため、自衛隊が危険な思想を持っていないかどうか監視する重要性は近年いや増しています

自衛隊という縦社会の特性上、OBが現役におよぼす影響力は無視できないものがあるでしょう(同じく縦社会の体育会系部活におけるOBを思い起こせばわかるかと)

防衛4団体の政策提言書は毎年チェックする必要があると思います

政策提言書