「日本スゴイ」の拡散と浸透

日本人が自国を過剰に讚美する姿があまりにも滑稽なことからつけられたインターネット用語。ホルホル※の対義語。派生語に「愛国ポルノ」「でも日本には○○があるから……」などがある(後述)

日本を過剰に讚美する者や出版物、テレビ番組などを指し、皮肉を込めて「日本スゴイ」「あいつまた「日本スゴイ」してやがる」と馬鹿にするときに使います
出版物やテレビ番組などのメディアには、日本礼賛で受け手を気持ちよくさせる働きから、「愛国ポルノ」という別称もつけられています
また、日本を讚美した出版物の著者などを指して「日本スゴイの使い手」と称したりもします

「日本スゴイ」がいつごろから使われはじめた用語なのか定かでありませんが、僕は日本礼賛テレビ番組が次々と生まれたあたりから頻繁に聞くようになりました

『YOUは何しに日本へ?』『世界が』『世界が驚いたニッポン! スゴ~イデスネ!!視察団』『COOL JAPAN〜発掘!かっこいいニッポン〜』『ホムカミ〜ニッポン大好き外国人 世界の村に里帰り〜』などなど、日本礼賛番組の氾濫に食傷したインターネット住民たちが好んで使っています
(皮肉を込めて「日本スゴイ」を使いたがる人の中にも、一部に「『和風総本家』だけは認めろ!」という勢力が存在したことは、インターネット史における「日本スゴイ」を考えるうえで面白い事象かもしれません)

早川タダノリさんによる『「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜』(青弓社)が、その強烈な表紙の力もあってロングセラーとなってから一般層にも広まった印象です
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当初は、日本と自分を同一視し日本が讚美されるたびに気持ちよくなっている人を馬鹿にして「日本スゴイ→俺スゴイ」と書かれていたのですが、いつしか「日本スゴイ」の一言だけで通じるようになりました
同様に、海外で活躍する日本人を見て気持ちよくなっている人を馬鹿にして「羽生結弦スゴイ→日本スゴイ→俺スゴイ」というふうに書かれていたものも、「日本スゴイ」の一言だけでOKになりました

※かつて日本のインターネット空間では、韓国人が自国を過剰に讚美する姿を「ホルホル」あるいは「ホル」と呼んで馬鹿にしていました。その批判が適切であったかどうかは定かでありません
用法「まーた韓国がホルッてらあ」など


「日本スゴイ」は海外の称賛?ワオっ!

「日本スゴイ」の人たちは「海外の人から見た日本はこんなにスゴイんだ!」という主張を好みます
海外から、というのがポイントです
そこには「反日の人は日本のことを悪く言うけど、それはプロパガンダで、本当はこんなにスゴイんだ」という想いの裏返しが見てとれます(自分たちが日本礼賛プロパガンダにひっかかっているとはミジンも疑いません)

そして「日本スゴイ」の人たちにとって「海外の人」とは、主にアメリカやヨーロッパの、しかも白人のことです
そのことは日本礼賛番組が、訪日数の圧倒的に多い中国・韓国人ではなく、数少ない訪日白人にスポットを当てていることからもうかがえます
「白人様が日本を褒めてくれてるー」という、白人コンプレックスの裏返しでしょう

白人ほどではないにせよ、日本礼賛番組には発展途上国の方を日本に招いて日本を褒めてもらうパターンも多くあります
発展途上国の人に対する蔑視の感情が透けて見えて、これ以上ないくらい醜悪です
かつて大日本帝国が「日本はアジアのお兄さんだから、みんなを導いてあげないとね☆」とやった姿を想起せざるをえません

いずれにしても「日本はスゴイはずだ、日本は海外から好かれているはずだ、いや実際に好かれているんだ」という盲念が感じとれて非常にきもちわるいです


日本スゴイの例:でも日本には四季があるから……

たとえば万世一系(笑)の皇室を誇る、あるいは神話から続く歴史の長さ(笑)を誇る(例:「子ども古事記プロジェクト」)といったものは、わかりやすくウヨくて可愛らしくもありますが……

・四季を誇る(他の国にはないと?)
・虫の音を愛でる感性を誇る(日本人は右脳の働きが外国人と違うんだとか言い出すからビビる)
・水道水が飲めることを誇る(塩素……水道法改正……)
・トイレを誇る(たしかに高性能だけど誇るほどのことかしら)
・食べ物を誇る(生まれ育った土地の食い物はそりゃあウマイよ、生まれ育った人には)
・キャラ弁を誇る(同調圧力に苦しむ日本の親たちの姿が見えるようだ)
・アニメを誇る(起源でもなければ、もはや最先端でもないんだよなあ)

など、もはやギャグだろというようなことまで誇っているのだから始末に終えません

これに海外の反応を加えると雑誌『ジャパンクラス』(東邦出版)になります
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ワオッ、カンベンしてくれよジャパニーズ!

なお、この手の言説から、日本の政治等で不祥事が起きた際には、「でも日本には四季があるからヘーキヘーキ!」「でも日本には四季があるから……」等と皮肉を込めて言われるようになりました
(四季はそのときどきに応じて水道水や)


出版とネットの責任:「日本びいきの外人を見るとなんか和むスレ」について

「日本スゴイ」はなにもテレビだけではありません
むしろテレビは、出版やネットなどの後追いに過ぎないように思えます

出版においては、香山リカさんが『フェイクと憎悪』(大月書店・共著)で指摘したように、「新しい歴史教科書をつくる会」や小林よしのりさんの台頭した1990年代半ばをその芽吹きと見ていいでしょう

ネットにおいては「海外の反応」系まとめブログの存在も大きいですが、「日本スゴイ」をインターネット史的に概観すると、なんと言っても2ちゃんねる(5ちゃんねる)の「日本びいきの外人を見るとなんか和むスレ」がその気持ちの悪さからして際立っています

まとめサイト:http://nihonnagonago.blog115.fc2.com

2007年7月31日、2ちゃんねる生活全般板に初代スレが立ち、その後場所を「おーぷん2ちゃんねる」に移しながらも細々と続いている名物スレです(書き込み数減少にともない上記まとめサイトは2018年6月18日に更新停止)

「日本びいきの外人を見るとなんか和むスレ」、通称「なごスレ」では、2ちゃねらーが接した日本びいきの外国人の話が次々と出てくるのですが……

出てくる外国人が、その、なんというか、みんな漫画やアニメの外国人キャラみたいで……

その人は本当にいたんですか?と問いかけたくなるようなリアリティの無さなのです
あえて印象を言わせてもらえば、ネット怪談と同じくらいのリアリティ
読んでいると頭が「日本スゴイ」になってくるので、思わず「破ぁ!」と叫んでその幻想をぶちとばしたくなります

そんなフェイクじみた「日本スゴイ」が、この国の片隅で10年以上続いているという事実に戦慄してしまいます

ニッポンって、どえらい国だな!(ジャパンクラス第11弾より)


「日本スゴイ」のなにがいけないのか?

自国を過剰に愛する者は、他国をないがしろにします
他国をないがしろにする者は、他国を侵略してもかまわないという思想に陥ります

ソースは日本です

かつて日本は国をあげて自国を「神の国」に仕立てあげました
国民に過剰な愛国心を植え付けました
そうして他国を侵略したのです

その涙ぐましい努力は前述した早川タダノリさんの『「日本スゴイ」のディストピア』など一連の著作で知れますが、どうも最近の日本は以前と同じ轍を踏みしめ歩いているように思えてなりません